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イケメン戦国~捕らわれた心~

第16章 十月十日~(婚姻の儀)


政宗は報告がてら
信長を呼びに行くと
白雪に告げ部屋を出る

「秀吉…悪いが白雪を頼む
まだ腹は目立たぬが身重だ
庭で転ばれては敵わんからな」

にやりとからかう様に
笑ってやれば頬を染めて抗議する

「大丈夫だよ…
子供じゃないんだから」

「俺が見てるから心配するな
一時も目を離さん」

「秀吉さんまで…もぉ」

「お前は大切な妹だからな」

秀吉は白雪の頭を撫でながら
白雪が気付かぬよう
政宗に向かって頷いて見せる

「母上…部屋まで送ります」

「……そうして貰いましょう」

保春院は差し出された
政宗の手を取り立ち上がった

暫く歩いた処で
ふいに歩を止める

「それで…何があったのです」

静かにけれど
はっきりとした口調で
政宗に問う保春院

「…こちらへ」

下手な誤魔化しは
通用しないと判断した政宗は

人気の無い部屋に
母を招き入れる

向かい合って座ると
視線をしっかりと合わせた

「…婚礼の着物に
毒針を仕掛けた者がおります」

母の瞳が見開かれる

「単刀直入に聞く
ご存知無い事ですか」

「なっ……!」

何か言い掛けた唇が
動きを止めた

唇を噛み締め
瞳に愁いの色を漂わせる

「…まだ…
許しては貰えぬか

当たり前か…
許すなど有り得ぬな

母の身でありながら…
息子に毒を盛るなど…」

その声が僅かに震える

「…が 誓って言います

そなたの
一等大切な者に

傷を付けるなど
決してしない

ましてや
身籠ったのは我が孫」

「…ふっ…子は殺せても
孫は殺せぬとでも?」

自嘲するように口先で笑い
母の顔色を伺う

「政宗…言い訳はしません
あの時…私は…確かに
選択を誤った…
そのせいでそなたにも…
小次郎にも辛い思いを…」

小さな手を
膝の上で握り締める

震えるその手の甲に
ぽたりぽたりと
涙が溢れた

「もう二度と
選択を謝ったりはしない

二度と…
愛する者を不幸にしない

その為にそなたの元を離れ
兄上の元へ戻ったのだから」


「……母上」


政宗は初めて見る
母の弱さを曝け出す姿に
先程の言葉を後悔した

母の実家である最上家とは
幾度となく衝突を
繰り返している

その都度
最上の長である兄を
説得し和義へと
導いているのは母であった
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