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イケメン戦国~捕らわれた心~

第16章 十月十日~(婚姻の儀)


(くそっ…頼む白雪…無事で居てくれ)

いつも通る廊下が
何故か長く感じる

大股で走る度
脚にまとわりつく袴が
まどろっこしくて
思わず掴みあげた

心臓が脈打ち
ドクドクと
耳障りな音をたてる

何度打ち消しても
蒼白い顔で横たわる
白雪の姿が頭を過る

(…っ…駄目だ…白雪…頼む)

白雪のいる部屋まで後
数十歩の所まで来た時

襖の向こうから
朗らかな笑い声が聞こえた

(この声!…無事だ)

一度足を止め
呼吸を整える様に
ゆっくりと息を吐く

三人で部屋に近づき
耳を澄ます

(白雪…と…誰だ?誰といる?)

懸命に耳を澄ませ
様子を伺うと

「…そこにいるのは誰じゃ?」

パンッ!

突然目の前の襖が
音をたて勢いよく開かれた

「…政宗…何をしておる」

そこには
自分と同じ青い眼を
驚きに見開いている母がいた

「…っ…母上…何故ここに」

「政宗?どうしたの?」

部屋の奥に白雪が見える
薄墨色の瞳で不思議そうに
政宗を見つめていた

鈴のような声で
政宗の名を呼び

澄んだ瞳に政宗を写して
小首をかしげている

その声を
その姿を確認し

呑気な表情に
心底安堵する

秀吉も同じ様に
肩で息を吐いた

「そなたこそ何故ここに?」

立ち聞きを咎める様に
母が政宗を睨め付ける

「…秀吉が花嫁衣装に不備がないか
確認したいと言うので…案内した」

政宗が咄嗟に話しを作り
花嫁衣装に近づく

「近くまでご案内致しました所
白雪様のお声が聞こえましたので
お相手を確認しようと…」

江介が跪つき
話しを合せた

「ならばまず
声を掛けるべきでしたね」

片眉をくいっと引き上げて
訝しげに政宗を見る保春院

「そうですね…ご無礼御許しを」

数歩後ろにいた秀吉が
保春院に声を掛ける

「婚儀まで時間が無いもので
焦って居りまして…
大変失礼致しました」

「これは秀吉殿…
いえ…信長様がご用意された
婚礼衣装に不備があっては一大事
私にお構い無くどうぞ…」

秀吉は黙礼して
部屋へと入る

なんとも気まずい雰囲気に
白雪が話題を変えようと
弾んだ声を出す

「あのね…政宗
御母様がこれをお待ち下さったの」

白雪が胸の前で
大切そうに何かをかざす

「母上が?」

「うん…私にって」

嬉しそうにふにゃりと
微笑む白雪に思わず
見いってしまう

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