第16章 十月十日~(婚姻の儀)
「私もずっとご一緒して
居りましたのに…
政宗様の変化にも
白雪様のお気持ちにも…
ちっとも気が付きませんでした」
「あー…それはなぁ…」
秀吉が苦笑いを浮かべ
ポリポリと頭を掻く
「お前は
戦術意外の事に無頓着過ぎる…
ある意味才能かもね」
いつも通り嫌みを溢す家康
「三成も身を固めれば分かるさ」
政宗が肩を抱いて
顔を覗き込んだ
「なっ?三成」
「えっ…あの…それはっ…
はぁ…そういうもの…
なのでしょうか?」
困惑顔の三成を
楽しげに見つめて光秀が言う
「俺が世話してやろう
どんな女が好みなんだ?」
「わっ私の様な未熟者が…」
声を上ずらせる三成に
秀吉が溜息まじりに告げる
「光秀の戯れだ…
いちいち本気にするな」
「御戯れでしたか…
驚いてしまいました」
目元を染め照れる三成に
光秀が意地悪く笑う
「嘘ではないぞ
お前が望むのであれば
女の一人や二人造作もない」
「止めとけ三成…
光秀さんの紹介じゃ
どんな間者か分からない」
家康が言うと
最もだと皆が笑う
そうして城の部屋に
着いてからも
男達は取りとめの
無い話しを繰返して
政宗の独身最後の夜を
昔話と共に楽しむのだった
翌朝
保春院を迎え
支城の家臣らも留守役を残し
青葉城に集まり始める
朝方から慌ただしく
支度を整える女中達
部屋の中で白雪も
落ち着きなく
そわそわと動き回る
「白雪様…
落ち着いて下さいまし」
「だって…
じっとしていられなくて」
座してもなお
そわそわと視線をさ迷わせ
やり場の無い指先を
あちらこちらへ動かす
緊張と戦う白雪を
微笑ましく想いながらも
段取りよく
仕事をこなす喜多
白雪の元へと届けらた
贅を尽くした婚礼衣装
白幸菱の打掛
白い袷
白い小袖
紅梅練貫
白い細帯
緋色の袴
白綾の上着など
上質な光沢を放つ
真っ白な絹の衣を
喜多がいそいそと
衣桁に広げていく
一瞬
喜多の動きが止まる
「喜多?」
一拍の間を置いて
早口で捲し立てる
「…っ申し訳ございません
大切な事を忘れておりました
所要を済ませてまいりますので…」
呆気に取られる
白雪を部屋に残して
喜多は政宗の元へと
足を早めた