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イケメン戦国~捕らわれた心~

第16章 十月十日~(婚姻の儀)


辺りの空気が紫に染まり
空が夜の顔を見せる頃

秀吉と三成を従えた
信長の一行が
青葉に到着した

城下に入ったと
知らせを受けた政宗達が
門前で一行を待つ

「…白雪少し痩せましたね」

家康が思い出したように
口を開いた

「あぁ…
でも随分ましになったんだぞ
一時は水しか口に出来なくて…
お前のお蔭で助かった」

「効いたんですね…吐き気止め」

俯いていた家康が
顔をあげる

「あぁ…
本当に助かった
礼を言うぞ…家康」

ゆらゆら揺れる
松明の明かりに照らされながら
政宗は家康を見つめた

「…良かった
戦傷ならともかく
懐妊は専門外ですから…」

ほっとした様に
肩の力を抜く家康

「今回も部屋に籠って
調べ物やら書き物やらしていたぞ」

光秀がからかう様に笑うと
不機嫌そうに顔を歪め

「白雪に何かあって
政宗さんがどうかなったら
ここまで来るの面倒ですから」

憎まれ口を叩く

「後でまとめた物を
渡しますからよく読んで…
後は医者と産婆の指示に従って下さい」

そう言うと背を向けて
顔を闇に向ける

「お前がそんなに
心配性とは知らなかったな」

光秀が面白そうに
家康の背中を見つめた

「ありがとな…」

政宗の意外な程
穏やかで優しい声に

家康と光秀が思わず
振り返った

「…そんな穏やかな
人でしたっけ…政宗さんて」

「まだ産まれてもないのに
さっそく丸くなったか政宗」

驚く二人に

「何事も経験だ
人は成長してこそ…だろ?」

そう言って不敵に
笑って見せた

調度その頃
信長の一行が姿を表す

三成を先頭に
家臣らが信長を囲み
殿(しんがり)を秀吉が務める

門前まで進むと
政宗達が出迎えた

「信長様…
お待ち申しておりました」

「出迎えご苦労
どうだ政宗…我が娘の
花嫁行列は如何であった」

まるで
悪戯を仕掛けた子供の様に
得意気に笑う信長

「それはもう…今後
語り種になるのは必至」

興奮する家臣や町人を
思い出し笑みが溢れる政宗

「未来永劫
語り継がれましょう」

そう言って
光秀も可笑しそうに笑う

「嫁入りに騎馬二千なんて…
御館様らしいと言うか…
白雪が負担に
感じなければいいが…」

秀吉が心配そうに
青葉城を仰ぎ見る

闇に溶け
見えなくなった城に
白雪の姿を思う
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