第16章 十月十日~(婚姻の儀)
「嬉しいけど…急にお城の人
増えて大丈夫なの?」
はたと考え白雪が
政宗の顔を仰ぎ見る
「問題ないだろ」
政宗が軽く応える
「織田家からの嫁入りだ
百人はこちらに残す事になる」
光秀が珍しく心配そうに
政宗を見た
「百人か…さすがに多いな
半分程度と考えてた…
まぁどうにかなるだろ」
政宗は肩をすくめて見せる
「門前からの道筋には
まだまだ余裕がありましたから
三の丸の増築は可能ですね」
家康が思い出すように
視線をさ迷わせる
「そんなに沢山…」
白雪が申し訳なさそうに
顔を曇らせる
「勘違いするな…
信長様の立場上
そうするのが政として
必要なだけでなにも
お前の為ではないぞ」
光秀が優しさを
意地悪で包み声をかける
「たかが百だ
その程度家臣が増えた所で
何の問題もない…
お前がそんな心配500年早い」
ぽんぽんと
頭を撫でて微笑む政宗
「義理とは言えど
天下人の息子になるんだ
家臣はどんどん増えるし
町もどんどん大きくなる
ぼやっとしてると
政宗を政に捕られるぞ」
光秀が半分はからかう様に
半分は覚悟させる様に告げる
「っ…捕られません」
「ほう…大した自信だな」
「政宗の一生は私のですから」
つんと唇を尖らせて
偉そうに顎をあげる
「ねっ?政宗」
「そうだな…
お前にやるって言ったな」
政宗が面白そうに
笑いながら白雪の頬をつつく
「あぁ馬鹿馬鹿しい…
のろけなら他でやってよ」
「なんだ家康」
「羨ましいのか」
口々にからかう
政宗と光秀に
乾いた溜息をついて
「ほんと…馬鹿らしい」
また呟いた
「ところで秀吉と三成は
信長様と一緒か?」
政宗が話題を変える
「あぁ…この辺の領地を
視察した後こちらに寄る予定だ…
あくまで表向きはな」
光秀が
可笑しそうに
喉の奥を鳴らして笑う
「自ら花嫁行列を
率いて行くと信長様が
言い出した時の秀吉の顔…
お前達にも見せてやりたかったぞ」
「花嫁の父が花嫁行列?
そりゃあ秀吉じゃなくても
止めるだろ普通…」
「政宗さんに普通を
語って欲しくない」
「あ そこ家康さんに賛成」
「こら白雪」
ピンっと額を弾かれる
「痛っ…」
白雪が大袈裟に
額を押さえた
「数日後には到着するはずだ」
額を押える
白雪を笑いながら
光秀がそう告げた