第14章 ピックアップ御礼記念~真夏の戦国武将~
「佐助も白雪も普通じゃねぇ
未来ってそんな
平和ボケしてんのか?」
幸村の言葉に思わず
二人顔を見合わせて笑う
「確かに」
「未来は平和だから」
笑顔で告げると
「戦なくしてどう生きるのだ」
謙信が佐助を睨む
「今日した波乗りのように
夢中になれることが
世の中には沢山ありますよ」
「ふん……悪くはない…
今夜は戦わず呑んでやる
梅干しはあるんだろうな?」
「さぁ!皆さん!宴のはじまりです‼」
佐助の合図で皆が
六角形に組まれた木枠を
中心に円を描いて
砂浜に座る
武将各々には
膳が用意され
家臣達は
大皿に盛られた
料理を囲むように
座った
「乾杯の音頭ですが…
死者の弔いってことで
顕如さんが適任かと」
佐助が
謙信と信長の間に
跪ついて伺いをたてる
「構わんが…あやつが
首を縦に降るとは思えんな」
信長の言う通り
顕如は自分には
資格がないといい
後で経をあげると言う
「ならば一番
汚れなき者がよかろう」
謙信がそう言いながら
白雪を一瞥する
「この中で唯一
人を殺めていない手だ」
全員の賛同を得て
杯を手に立ち上がる
「えっと…じゃあ…」
失われた
多くの命を思って
眼を閉じる
「より良い未来に」
『より良い未来に!』
登り始めた月に
杯をかかげてから
一気に煽る
熱い液体が
喉を滑るように
流れ落ちた
「おい…大丈夫か?」
「…うん…たぶん」
「ったく…こっち来い」
空きっ腹に
酒が染みていく
白雪は政宗に
凭れながら
敵味方なく
酒を交わし
同じ皿から
料理をとりわけ
会話と食事を楽しむ
皆の姿を嬉しそうに眺める
「政宗の作る
未来の第一歩だね」
「っ…あぁ…そうだな」
皆の夢見る世が
今まさに目の前にある
側で聞いていた
武将達も複雑な思いで
その場を眺めていた
長年思い描く
平和な時間…
敵味方なく話し…笑い
同じ物を食べ飲み
また笑う
「白雪は
血の一滴も流さず
やってのけたな」
信長が低い声で笑う
「戦う以外に進むべき路が
あったのかも知れんな」
信玄が静かに応える
「今さらだろう」
謙信が言いながら酒を煽る
「そうでしょうか?
少なくともこれから
失われる命は減ると思いますが」
佐助が謙信の
酌をしながら応えた