第14章 ピックアップ御礼記念~真夏の戦国武将~
「ふっ…そうだな
こんなに無防備に
過ごしたのは久方ぶりだ」
「同感だ」
信玄が笑い
光成も苦笑いする
顕如は短く息を吐き
「鬼にはなれんか…」
と聞き取れない声で呟いた
どれ程の時間を
そうして過ごしたか
空が茜に染まり始め
風が冷たくなってくる
一人また一人と
海から上がり
浜辺の天幕に戻って来る
「うわ~腹へった」
幸村が浜に寝転がる
「…確かに動いた分
腹が減ったな」
信長がどかっと隣に座る
「政宗何とかしろ」
その隣に秀吉が腰を降ろす
「っ…お前なぁ無茶苦茶言うな」
政宗が笑いながら座る
「このような何もない所では
いくら政宗様でも…」
「三成…冗談だ」
「あっ…そうでしたか
申し訳ありません秀吉様」
「お前は一度溺れてこい」
呆れた声で家康が言い切る
「冗談はともかく腹は減る
…佐助何か用意しているのか」
謙信が佐助を振り返ると
自信に満ちた表情の佐助と
視線が絡んだ
「勿論です
少々お待ち下さい」
そう言うと皆を残して
風のように走り去る
「忍って元気だな…」
波に揉まれて
ぐったりしながら家康が呟いた
暫く待つ間に
武将達は白雪お手製の
甚兵衛に着替える
各々
信長は黒 秀吉は深緑
三成は藤色 家康は辛子色
政宗は藍色 光秀は薄灰色
謙信は空色 佐助は若草色
信玄は薄茶色 幸村は朱色
顕如は紫色
白雪自身は
白地に青い朝顔を描いた
浴衣に着替えた
佐助が用意していた
真水で身体や髪を
流してはいるが
思わず呟く
「やっぱりこういうときは
シャワーと
シャンプーが恋しいなぁ…
なんて…贅沢だな」
自分の言葉に
苦笑いして鏡を取り出す
髪を纏め
薄く白粉をつけ
紅をひく
自分用の小さな天幕を出ると
佐助が戻って来ていた
「あ…おかえり
甚兵衛貰ってくれた?」
「ありがとう
皆を案内してから着替えるよ
白雪さん浴衣姿似合ってる」
佐助が嬉しそうに微笑んだ
「ありがとう新調したの」
白雪もまた嬉しげに微笑む
「俺が見立てたんだ
似合うに決まってる」
不敵な笑みを浮かべた政宗が
白雪の背後から肩に顎を乗せて
自慢げに言う
「昼間の飾らない姫も美しいが
そうして紅をひいた姿は
艶やかさが増して一層美しいな」
信玄が皆の心を覗いたように
褒め称えるのだった