第14章 ピックアップ御礼記念~真夏の戦国武将~
白雪は首を傾げて
政宗の背中を
ぽかんと見つめる
「ったく…
無自覚ってのもたちが悪い…」
政宗のぼやきが
虚しくも波音に
かき消されていく
暫く後…
白雪を嫌らしい
目で見ないと
政宗から無理矢理
約束させられた男達は
波の上でバランスを取ろうと
躍起になっていた
「見本を見せます
次の波に乗りますから
この辺りで見てて下さい」
この日の為に
佐助が手を尽くして
用意したサーフボード
試作品の試乗をするうちに
図らずもサーフィンを
マスターしたという
佐助が皆から沖へ離れていく
暫く波を待つと
素早く漕ぎ出し
立ち上がったかと思うと
あっという間に
信長達の前を
滑るように通り過ぎて行った
「わぁ!上手」
白雪が歓声をあげる
「なるほど波の力を
利用して前へ進む訳か」
「問題は立ち上がる
一瞬の時期を逃さぬ事か」
信長と謙信が
冷静に分析して
頭の中で反芻する
「考えてても始まらない
とにかくやってみるか」
「おー
やってみようぜ」
政宗と幸村が
移動を始める
秀吉は信長の側を離れず
家康と三成が
ぷかぷかと波間を漂う
「二人はどうするの?」
「むやみやたらと動いても
体力を消耗するだけでしょ
…まずは観察する」
「同感です
僭越ながら私も家康様と
全く同じ事を考えておりました」
「普通だから…
あの人達が普通じゃなさ過ぎる」
秀吉を除く四人が
佐助の見よう見真似で
波乗りを開始する
「うそ…乗れてる」
「通常はどれ程で
修得出来るものでしょうか?」
「立てる様になるまで
…数刻か数日かな?」
「成る程…さすが信長様
謙信様とて軍神とまで
呼ばれるお方ですし…
政宗様の運動能力は
数々の戦で実証済みです」
三成がつぶさに観察する
「あいつだって…
真田の赤備えを率いるだけあって
動きに無駄も隙もない」
家康が感心したように呟く
「やっぱり
戦国武将って現代人とは
基礎能力が違うんだ…」
白雪は驚きを隠せず
ただ呆然と
波と遊びだした
武将達を眺めた
「ただ立つだけでは芸がないな」
「馬術のように
重心を変えてはどうだ?」
「それもあるが…
波が板に当たる角度を調整したい」
「では波を待つ場所を変えるか」
華麗なライディングを
決めた佐助が
白雪達の所へ戻って来る
「嘘だろ…」