第14章 ピックアップ御礼記念~真夏の戦国武将~
一方
浜辺に取り残された二人
「政宗…着せて貰っていい?」
「おぅ…どれ貸してみろ」
細身の長袖で
肩と肩甲骨を袖幅で覆う
ボレロの様な形だが
伸縮性のない布で
出来たそれは両腕を入れると
肩を引き揚げられない
白雪が背中を向けると
群青色の隻眼の龍が
ギラギラ輝く太陽に
照らされてまるで
生きている様に見える
「…政宗?」
「…あぁ待て」
真っ白な背中と
群青の龍に
淡い口付けを残してから
ぐいっ…と上着を引きあげる
「よしっ」
「っ…もぉ…よしじゃないよ」
振り向きながら
唇を尖らせる白雪
ちゅっ
「っ…!」
音をたてて口付けると
眼を見開き
驚いた顔の白雪が
頬を赤らめる
「なんだ?唇突きだして
おねだりしたんじゃないのか?」
ニヤリと笑いながら
胸のまえで上着の紐を
結んでやる
「もおぉ…」
白雪が可愛らしく
睨んでくる
何か言い掛けた時
「おぉーーい!
政宗!勝負するんだろ!」
波の上で
板にしがみついた幸村が
政宗を呼んで叫んだ
「おー!今行く!」
「いちゃいちゃ中にすまない!」
佐助が叫ぶ
「変な事叫ばないで~!」
「変な事とはなんだ
変な事とは」
白雪の脇腹を政宗がつつく
「きゃっ…もぉぉ!」
「おい…言ってる側から
いちゃいちゃするな」
「ふっ…なんだ?羨ましいのか」
バシャッ‼
「……おい…やったな?」
頭から水滴を滴らせた
政宗の青い眼が
不敵な光りを帯びた
浜辺の大人達は
賑やかな若者達を尻目に
佐助が
全国から取り寄せた
至極の一品に
舌鼓を打っていた
「…幸と独眼竜が
水の掛け合いを始めたぞ」
信玄がゆったりと
胡座をかくと
酒を片手に楽しげな
笑い声をあげる
幸村や佐助達を眺める
「…若いな……あれは上杉と…」
顕如が眩しげに
眼を細めて波間を見る
「…信長様…に見えるな」
光秀の眼にも
謙信と信長がむきになって
水を掛け合う姿が写る…
「…私はあんな
子供じみた男に負けたのか」
「……どんな戦いも
手を抜かんのが信長流故…」
苦笑いを浮かべる光秀は
酒を勧めるより他に
落ち込む顕如に
掛ける言葉が
見つからなかった
「顕如…呑め」
「…頂こう…」
「ほう…見ろ天女を」
信玄に誘われ
光秀が今一度波間に
視線を移すと…