第4章 隻眼の龍
「かまわん…
そんな姿を見るも一興だ
流石の独眼竜も白雪の前では形なしか」
挑発的に笑う信長に
挑むような視線を送る政宗
「白雪にかかれば
誰しも同じ弱っちょろい癖に
怖いもの知らずの鉄砲玉で
おまけに女だてらに刺青って…
どこ探したって
こんな奴そうそう居ませんよ…」
呆れ顔の家康が割って入る
興を削がれた信長は視線を移すと
低い声を広間に響かせる
「余興としては
なかなかであった
酒をもて今宵は
朝まで呑み明かそうぞ!」
かちゃかちゃと
ぶつかり合う陶器の音
ぱたぱたと
忙しげに動く女中達
広間からは絶え間なく
愉しげな話し声と
笑い声が響く
乱れた着衣を整えるからと
座を離れた白雪が
別室の襖に手をかけると
小さな手を覆うように
日に焼けた大きな手が
重ねられた
「昨夜から
何度も抱いてたのに
気が付かなかった」
「っん…」
突然耳元で囁かれ
唇から甘い声が溢れる
ぞくりと背中を這う痺れに
たじろいていると
背後から抱き留めれられ
そのまま襖の奥に引き込まれた
「っ…政宗」
咎めるように唇を食む
「秘密にしてた
罰を与えなきゃな」
艶を帯びた政宗の声が
深くまで耳を犯して
反論したい白雪を封じてしまう
「っ…ん…ふっ…あっ」
唇を甘く噛まれ
ぬるりと舌を差し込まれ
矢継ぎ早に熱を与えられて
息も絶え絶えに
やっとの思いで抗う
「っ…はぁ…だめだよ…戻らなきゃ…」
「あぁ…お前の為の宴だ
主役が不在じゃ格好つかないな」
身体を巡るどうしようもない熱を
無理矢理抑え込み余裕な顔を作る
「帰ったら…覚悟しろよ」
不敵に笑って
紅く染まる耳をがぶっと噛んだ
可愛い悲鳴をあげた
白雪を残し広間に戻ると
皆先程の話で持切りだ
「天女様のお肌を
拝見できるとは身に余る光栄」
「あの龍神様
は伊達家の守神に違いない!」
「これで伊達家も
織田軍も安泰というもの」
盃を片手に興奮ぎみの
家臣達の会話を聞きながら
用意された自分の席に座る
茶を飲もうとして動きを止めた
「…おいっ」
政宗の隣…涼しい顔で
水のように酒を流し込む
光秀をジロリと睨む
「なんだ…藪から棒に」