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イケメン戦国~捕らわれた心~

第13章 十月十日


出会った時は
薄汚れたなりを
していた緋影も

髪を整え
着物を与えられ

見た目だけなら
女達が振り返る程だ

だが年端もいかぬ頃に
橋の下に捨てられ

近くを根城にしていた
盗賊達に拾われた緋影は

読み書きが
全く出来なかった

政宗が江介や
与介達に銘じて
字を覚えさせている

むろん剣術や
礼儀作法など

武士として
必要なものは全て
身に付けさせるつもりだ

本人もそのつもりで
日々食らい付いてきた

一月程でひらがなは
ほぼ攻略したものの

漢字が列なる
文や書物はまだ
読めないようだった

「すいません…」

肩を落として
落ち込む緋影に
白雪が声を掛けた

「大丈夫!私も最初は
そうだったから…すぐ覚えるよ」

「白雪様が?」

驚いた様に顔をあげ
白雪と政宗を交互に見た

常々共に行動していた
家臣達とは異なり

緋影は空から現れた
白雪を見ていない

白雪を本当に織田家の姫と
思っているらしい

正式に
信長の養女となった今では
織田家の姫君であるのだが

政宗の側近や家臣
政宗付の女中らは
影では未来より
舞い降りた天女と呼んでいた

「ふっ…
そのうち教えてやるよ
俺達の馴初めを」

ぽけっとした顔で
白雪を見る緋影に
笑ながら告げる

「…はぁ」

なんとも
頼りなげに頷いて
部屋を後にする緋影に

明日は武芸の
稽古を付けてやると
約束すると嬉しそうな
笑顔を見せた

「少しは慣れたかな?」

「どうだろうな…
まぁ時間の問題だろ」

白雪が心配そうに
緋影の背中を見送る

「友達でも
出来るといいけれど…
家臣の人達に
若い子っているの?」

「あぁ勿論
元服したばかりのが
何人かいる…が
皆産まれた時から
武家の嫡男だからな…」

「気位が高い?」

「へぇ…よくわかったな」

「まぁ…武家の嫁ですし」

白雪は形のよい鼻を
つんとあげて
澄まして見せる

「ふっ…言ったな?」

政宗は嬉しそうに
笑みを浮かべ

白雪を後ろから腕に
閉じ込める

「で?武家の嫁は
どう思うんだ?緋影の事」

「頑張って欲しいだけ…」

「頑張ってるさ…
あいつらも認めてる
ただ…頑張れば頑張るだけ
足を引っ張られるのも事実だ…」

「出る杭は打たれる…」

「目立てばその分
やっかまれるからな
まぁそれで駄目になる様なら
それまでの奴って事だ」
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