第13章 十月十日
吹き出した白雪に
政宗が不機嫌な顔を見せる
「なんだよ」
「だって…ふふっ…」
「見えれば安心だろ」
「うん…そうだね…あっ!
未来では見えるんだよ」
忘れていた何かを
思い出した様に白雪が
はっとした顔を見せた
政宗がきょとんとした顔で
白雪を見つめる
「はっ?腹の中が?」
「うん…難しい事は分からないけど
反射を利用する器械でお腹の中を
傷つけずに見ることが出来るの」
自分で言葉にしておきながら
そんな事が出来るのかと驚く
「きっと政宗みたいに
見えない不安を解消しようと
考えた人が沢山いるんだね」
白雪がキラキラした瞳で
政宗を見つめる
「やっぱり政宗って凄いね
根底から覆すような
発想や判断が普通じゃないよ
そうやって未来を変えていく
…変えていける人なんだね」
白雪の政宗を見る目に
熱が込められていく
「っ…なんだよ…
突然口説くの止めろって言っただろ」
仄かに耳を
赤らめた政宗が
拗ねたように呟いて
腕に抱く力を強める
「そうゆーのは俺の役目だ」
甘く香る白雪の首すじに
軽く歯をたてる
「あっ…んん…
口説いて…ないよ…」
爽やかな風が
花の香と共に
二人を包むように流れ
政宗の心が
穏やかに満たされる
見つめ合えば
白雪もまた
穏やかに微笑む
「久々に見た」
「え?」
「お前の穏やかな顔…ここのところ
蒼白い顔して苦しげにしてたろ」
頬を手の甲で撫でると
猫のように手にすり寄る白雪
「家康さんの薬草
本当によく効くね」
別れ際に
家康から渡された書にある
吐気止めに効くという
薬草を煎じて
飲ませてやると
顔色が僅かにいい気がする
「今日は食えそうか?」
「うん…あっさりしたものなら…」
「なら薄味にして何か作ってやる」
「ありがとう…
家康さんにもお礼しなきゃね」
「そうだな」
「もう暫く
こうしててもいい?」
政宗の腕に抱かれ
逞しい胸に凭れて
風の音と鳥の歌を聴きながら
花の香と政宗の匂いに包まれ
白雪はゆっくりと目を閉じる
「あぁ…ずっとこうしててやる
お前が望むなら何時までだって…」
政宗は空を見上げ
変わりゆく
雲の流れを楽しみながら
変わらない
白雪の温もりを楽しんだ