第13章 十月十日
「忍者集団?」
白雪が驚いた様に
眼を見開く
「あぁ京都まで
佐助と旅したろ?
あの時思い付いて
直ぐ人を集めたんだ」
「えぇっ…じゃあもう伊達軍に?」
「いや…そう簡単じゃない
あの佐助だって
一人前に動けるまで
あの軍神の元で
一年以上鍛練したと聞く」
「っ…そっか」
「奥州には蔵王山があるからな
まずは修験道として修行させてる」
「緋影もそこへ?」
「…いずれ…今は読み書きや
礼儀作法を覚えるのが先だ」
「まぁ…俺たちの子が
大きくなる頃には
一人前の忍になって
力を添えてくれるはずだ」
「ふふっ…気が早いね
まだ産まれてもないのに」
白雪は庭の東屋で
政宗に凭れて
外の空気を楽しんでいる
「どうだ気分は?」
「うん…だいぶ落ち着いたみたい」
安土より戻って
暫くすると
白雪が体調を崩した
確信を得たように
つわりの症状だと
白雪は微笑んだ
「何故そんなに
落ち着いていられる?」
何が起きても
余裕の表情を崩さない政宗が
初めて見せる狼狽えた姿に
白雪が和紙に何かを
さらさらと書き出す
肩越しに除き込むと
「これは五百年後に
使われているえぇと…暦の表
これが文月これが葉月で」
四段七列の升目に
一から三十の数字を書き込む
「文月のここで…怪我をして
床から出られたのがここ
月のものがここで終わって…」
白雪の指が升目の日にちを
追って記憶を辿っていく
「予定だとここで
月の物が来るはずだったの」
「でもこなかった
それだけで確信したのか?」
「二週間も三週間も
ずれたりはしないし…
妊娠の初期症状と当てはまるから」
「へぇ…」
今一つピンとこない政宗に
白雪が五百年後式の暦表に
視線を戻す
「最終月経からだから…
今は五週目かな…」
「ごしゅうめ?」
「うん…七日で一週間と数えて
普通四十週間程で産まれるみたい」
「じゃあ後三十五週間で
産まれるってことか…凄いな」
政宗が眼を輝かせ
白雪の腹を覗き込む
「何事もなければ…ね」
「何事もないに決まってるだろ
俺が側にいてお前を守る
二度とお前を不安にさせたりしない」
「ふふっ…ありがとう」
ふにゃふにゃと
嬉しそうに笑う白雪
「ちゃんとお腹に居てくれるかな」
そう言いながら
愛おし気に腹を擦る