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イケメン戦国~捕らわれた心~

第12章 織田家の姫君


秀吉が厳粛に宣言する

「これより国務評定を執り行う」

最前列から
まるで波が起きた様に
男達が頭を垂れる

軍務評定
内務評定
外務評定
法務評定
財務評定

それぞれ議題を提出し
家臣達が広く議論を行う

滞りなく進められた後
信長の承認を得て

各々が政務に
励むよう命を受けた

これでお開きかと思われた時

「お集まりの皆様に
信長様より通達がございます」

三成の声を合図に
上段の間の襖が再び開かれる

現れたのは
雪の様に白く
絹のように艶やかな
薄墨色の髪を
長く背中に垂らし

けぶるような
睫毛の間から
黒真珠の様に
輝く瞳を覗かせる
美しい姫

男達の間を
さざ波のように
感嘆の溜息が
通り過ぎていく

美しい打掛が品良く
その美貌を際立たせる

やんごとなき姫君は
静静と歩みを進め

信長の隣に座して
背筋を伸ばす

信長は満足そうに
顎をさすりながら
眺めると

「皆に紹介しよう
一時この安土に
暮らしていた白雪だ
縁あって先刻 我が娘となった」

「白雪と申します」

微笑みを浮かべ挨拶すれば
男達は熱に浮かれたように
とろんとした眼差しを送る

「むっ…娘といいますと
養女に迎えられたと言うことで?」

下段の間で
最前列の男が声をあげた

「いかにも」

中段の間に控えた秀吉が応える

「なんとも
お美しい姫君でございますな
失礼ながら嫁ぎ先はもうご検討を?」

「本当に麗しい
どんな武将もひれ伏しますぞ」

「これだけの姫君ならば
上杉も武田も息をのみましょう」

「ほう…」

家臣達の言葉に
信長が片眉をあげる

「我が娘を
同盟の道具に致せと申すか?」

男達がはっとして
顔色を変えた

その場にひれ伏すと
震える声で詫びを口にする

「めっ…滅相もございません
出過ぎた真似を致しました」

「どうかお許しをっ…ひらに
ひらにご容赦下さいませっ」

政宗はそんな様子を
黙って見下ろしている

「…俺が許しても…
政宗が何とするか」

信長の言葉に
俄に広間がざわつく

「なぜ伊達殿が……」

一瞬…ほんの一瞬男達が
信長に視線を移した刹那

ひれ伏した男達の目前に
燭台切光忠の切っ先が
怪しく煌めいた

「ひっ」「っ…」

「姫を敵将に渡すなど
どの口が言ったんだ?
二度と不粋な口が訊けぬよう
その首貰い受けてやる」

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