第12章 織田家の姫君
「はくぶつかん…とは
なんの事でしょうか?」
「あ…えぇと
特定の分野についての
資料や品物を集めて
展示する所…かな」
「それは素晴らしいですね」
三成が紫色の瞳を
キラキラと輝かせる
「へぇ…そんな所に
着物が置かれるのか」
「それほど素晴らしい
品という事でしょう」
喜多が満足そうに何度も頷く
「こんな高価なもの
頂いていいのかな」
「返されたって信長様が
着る訳にもいかないだろ」
「そうですね…困りますね」
政宗の冗談に
真面目に応える三成に
喜多と白雪が笑みを溢す
「ふふっ…
ではありがたく頂戴致しますね」
「そうして下さると
私もお叱りを受けずにすみます」
三成が輝く笑顔を浮かべる
「ところで白雪様…」
「なぁに?」
「その はくぶつかん という所は
戦に関する物もあるのでしょうか?」
「勿論」
いつも戦術書など
読みふける熱心な
三成の姿を思い出して
白雪が
思い出すように応える
「未来の博物館には
石田三成の鎧兜も
展示されてるよ」
「えっ」
三人が目を丸くして
声を揃えた
「勿論 政宗のも…
信長様のや秀吉さん
家康さん光秀さんもね
本物じゃなくて
真似して作られた物も
あるみたいだけれど」
「…そんなもの眺めて
なんになるんだ?」
政宗が怪訝そうに首を捻る
「この時代の人々の…
足跡を感じるとか?
学術的歴史的に
価値が認められた物
しか置かれないから
それだけ武将の行動が
未来に影響を
残すって事じゃない?」
「成る程…
では未来の民に恥じぬ
生き方をせねば成りませんね」
三成が自分の言葉に
納得した様に
真面目な顔で頷く
「他人じゃなく
己に恥じぬ様に生きろ
それに生きる事をもっと
楽しまないと損だぞ」
「ふふっ…三成くんは
とっても真面目だもんね」
「…そうでしょうか?……
あっ申し訳ありません…
お話が楽しくてつい長居を」
「っ…たく…これだよ
そのくそ真面目を
どうにかしろって言ってんだ」
政宗は半ば呆れた様に
三成の肩をぽんと叩く
「はぁ……性分なものですから
申し訳ありません」
しょげる三成を
喜多と白雪は
顔を見合わせて笑う
「三成くんの
長所は真面目なとこで
短所は真面目すぎるとこだね」
「政宗様とは
真逆でございますね」
喜多が涼しい顔で笑う