第12章 織田家の姫君
翌朝
白雪は何時も通り
愛しい人が
髪を鋤く動きで
目を覚ます
「おはよう」
「おはよう…」
まだ眠いのか
ぐりぐりと
政宗の固い胸に
額を押し付けてくる
「ふっ…なぁにしてんだ」
「…うー……」
「くくっ…やめろ…くすぐったい」
「……だめ…やめない……」
「っ…こぉら」
「んー政宗の匂い…好き」
「っ…たく」
着物の合せから
政宗の素肌に
顔を埋める白雪
目の前の髪に鼻先を埋め
腕にすっぽりと身体を納める
柔らかく細い身体
甘く香る髪
絹糸のような髪を
指で鋤くのが毎朝の日課だ
指を動かす度
立ち上る独特の甘い香に
疼く自身を自制するのも
今や日課といって良かった
「起きれるか?」
額に口づけて
顔を覗き込む
ふるふると
左右に頭を振って
政宗の着物の中に
潜り込もうともがく
「っ…おいっ…こら」
するりと右袖に
白雪の細い左腕が侵入する
身体の半分を政宗の
着物に押し込んで
なんとも幸せそうに
胸に頬を寄せる白雪
「あんまり可愛い
事するとまた襲うぞ」
「ふふっ…もう時間だよ?」
すべき事を
すべき時刻に済ませる
そんな政宗の性分を
承知している白雪は
するすると滑らかな
脚を絡ませてくる
「っ…くそっ…」
起きる時刻なのは
分かっているのに
甘い誘惑にかられて
思わず手が太腿に延びる
柔らかく滑らかな肌を
撫で回しながら唇を奪う
角度を変えて
幾度も深く絡ませると
白雪の口から吐息が溢れた
「んっ……あっ……はぁ」
ちゅっ……水音と共に離れる
「大好き……」
蕩けた顔で
可愛い事を言う白雪を
奥の手で黙らせる
「愛してる」
「っ…」
打ちのめされた様に
言葉を失い胸にしがみつく
「降参か?
それともまだ続けるか?」
耳を食みながら
直接声を注げば
呆気なく降参した
「もう…ずるいんだから」
拗ねた声ながらも
楽しげな白雪が可愛くて
なかなか起き上がる
決心がつかないのも
何時もの事
気合を入れるように
短く息を吐いて
褥から身を起こし
身支度を整える
馴れた手付きで
眼帯を付けると
ちらと白雪を盗み見た
政宗の視線に気付かずに
畳に広げた夜着を畳んでいる
白雪は元が几帳面なのか
身の回りはいつも
整然と片付いていて
それも政宗は
好ましく思っていた