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イケメン戦国~捕らわれた心~

第12章 織田家の姫君


「のう?家康」

揶揄する様な笑みを向けられ
無愛想に拍車をかけると

大袈裟に溜息をつきながら
本題に入れと促す家康

「はぁ…勝手な事言わないて下さい…
で?そんな話しの為にわざわざ
呼び出した訳じゃないでしょう」

家康が信長を
急くように睨む

秀吉と三成が目配せすると
三成がその場を離れた

光秀は何が始まるのかと
期待を込めて信長を見る

政宗達も
相変わらず表情の読めない
信長の言葉を待った

「政宗…」

「はっ」

威厳に満ちた声で
名を呼ばれた次の瞬間

耳を疑う言葉が放たれた



「今宵 白雪を貰い受ける」



「……はっ?」

一瞬ぽかんと口を開け
直ぐ様 眉をひそめる政宗

「…おっしゃる意味が
分かりかねます」

「これより白雪を我が物とする」

政宗が挑むように
信長を睨み付ける

家康が驚きを隠せずに
目を丸くして固まる

光秀は僅かに目を見張り
成行を静観する

秀吉が何か言おうと
口を開きかけて
信長に睨まれ口をつぐむ

誰一人発言する事なく
緊迫した時が流れる




静まり返る広間の
襖が音もなく開かれると

三成が膳に乗せた
杯と酒を手に戻る

慎重に脚を運び
信長の前に膳を置く

座に戻る三成が
蒼白な白雪を見て
首をかしげる

秀吉がはらはらとした様子で
信長と政宗を交互に見つめていた

「言葉のままだ白雪を寄越せ」

心臓がドクリと
音を立てて騒ぎ出す

耳の中を鼓動が占領し
他の音が遠くに聴こえた

暑くもないのに
背中を汗が伝う

「出来かねます」

絞り出した
否定の言葉を
信長の視線が跳ね返す

「政宗…この俺に逆らうか?」

地を這う低い声が
唸るように響き

冷淡な瞳は感情を写さず
獲物を待つ獣の様に
鋭く政宗を絡めとる

全身から揺らぐ殺気に
逆らえば命は無いと
本能が警鐘を鳴らす


(出来ない…
それだけは譲れない)

手負いの獣の様に
充血した眼をギラつかせて
獰猛な眼差しを向ける

白雪の目には
その手が今にも
刀を握りそうに見えた


「っ………白雪は渡せ」

「分かりました」

政宗の怒りに震える声を
白雪の凛とした声が遮った

突然の事に頭が回らず
呆然と白雪を見る

蒼白な顔を真っ直ぐ前に向け
震える手を震える手で押さえ込み
毅然と信長を見据えて口を開く

「信長様の元へ参ります」

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