第12章 織田家の姫君
広間に入ると
秀吉 三成
家康 光秀らが揃っていた
政宗が入り隣に白雪が座る
喜多は白雪の後ろに控えた
脇息に凭れた信長が
政宗の顔と秀吉の右手を見て
口の端をつり上げて笑う
「派手に
じゃれおうたな政宗」
「少し遊びが過ぎまして
お見苦しい顔で失礼致します」
政宗は両の拳を付き頭を下げた
「ふん…箔がついてよかろう」
愉快そうに笑うと
白雪へ視線を移す
「話しは聞いた 白雪
難儀であったな…大事ないか?」
「はい…ありがとうございます」
「後ろは喜多か?久しいな」
「覚えておいででしたか?」
「貴様とはまだ勝負が
付いていないだろう」
「えぇっ?」
白雪がすっとんきょうな
声をあげた
「囲碁の勝負ですよ」
三成が微笑みながら
白雪に教える
「喜多さ…喜多と囲碁を?」
「喜多さんはお強いのですよ」
「そうなの?」
「俺は今だ勝ったことがない」
右手に包帯を巻いた秀吉が
ぎこちなく笑った
「私も連敗中です」
三成も頭をかく
「凄いっ」
目を輝かせて白雪が
喜多を振り返ると
「嫁入りに囲碁の免状を
お持ちになりますか?」
悪戯な笑顔を浮かべ
白雪の顔を覗き込む
「政宗はするの?」
白雪は政宗に
身体ごと顔を向けて聞く
「あ?…あぁ まぁたまにはな」
そう聞くと
笑顔を輝かせる
「じゃあ是非!」
一斉に笑い声が上がる
「えっ?なにっ?」
笑われた意味が読めずに
きょとんと回りを見渡す白雪
呆れ顔の家康が
溜息混じりに答える
「冗談だから…
そんなもんに免状なんて
有るわけないでしょ」
「相変わらずだな白雪…
お前の純真無知な頭には
どんな戦略も意味を成さんな」
光秀が意地悪く笑うと
頬を少し膨らませ
不服げな白雪が言い返す
「家康の無愛想も
光秀さんの意地悪も
相変わらずですね」
「ほう……白雪
言うようになったな」
思わず言い返した白雪を
信長がにやりと笑って見つめた
「っ…」
圧倒的存在感を示す
信長の視線に晒され
思わず言葉に詰まると
つかさず喜多が助け船を出す
「私が日々
鍛えております故
家康様を笑顔にして
光秀様を煙に巻く事の出来る
唯一の姫になりましょう」
信長は高みから
面白そうに
目を細めて笑う
「それは楽しみが増えた
こやつらで遊ぶのもまた一興」