第12章 織田家の姫君
自分の着物を見せ
次に政宗を差す
「あの着物も
あの刺繍も あの羽織りも
総てこの手で縫ったのよ」
「ほら 良く見ると縫い針の
当たる所が痕になってるでしょう?」
よく見れば白雪の
華奢な指には
縫い針のたこが出来ている
「……」
男は黙って白雪の手に
視線を落としている
「このお金はそうして稼いだの」
男ははっと眼を見開き
白雪の顔をまじまじと見つめた
白雪はにっこり笑うと
今度は政宗の腕を掴み
男の前まで連れて来る
政宗の手を男の前にかざした
「この手はどう思う?」
かざされた政宗の手
大きくて武骨な男の手
「ほらここ…
これは刀を握る時に付く痕
こっちは筆を持つ時に出来る痕
この手の甲にある傷は
暴れ馬から子供を救った時の物
こっちの傷は刀傷かな……」
かざされた政宗の手を
包むように手を添えて
労るように撫でる
「ゴツゴツしてて
傷だらけだけど…
大切なものを守ってきた手…」
「私はこの手が好き
この世で一番
綺麗だと思ってる」
「だったらなんだってんだよ!
俺には関係ねぇ
そもそもそいつは
武家の息子に産まれたんだろうがっ
はなから恵まれた奴と一緒にすんなっ!」
「この先
貴方がどんな手の
持ち主になるかは分からない
……けれど…自分の手を
誇れる人であって欲しい」
「っ……馬鹿馬鹿しいっ」
男は唇を噛み政宗の
大きな傷だらけ手を
睨むように見る
「ふっ…白雪…」
政宗が優しく微笑み
白雪の頭を
くしゃりと撫でた
男に向き直ると
「お前…命拾いしたな
俺の女に無断で触れて
生きていられたのはお前位だ」
「……」
「次に会うときは
もうちょっとマシな面…手の男になれ」
「これは俺の女に触れた罰だ」
男の頭にゴチンと
げんこつを落とす
「いってぇ」
「今度会った時
今と同じ事してたらその時は………斬る」
「っ…」
「分かったな」
ぽんぽんと頭に手を乗せて
政宗はにやりと笑った