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イケメン戦国~捕らわれた心~

第12章 織田家の姫君


政宗は喜多と視線を合わせると
ふっと肩を落とし
笑う様に息をつくと
刀を鞘に戻した

政宗は唖然とする
茶屋の主人に
お代と迷惑料だと
少し多めに握らせたる

喜多は何事もなかった様に
財布を拾い上げると
ぽんぽんと埃を落として

一方をしっかりと懐に仕舞い
もう一方を白雪に差し出した

白雪は黙って受けとると
何を思ったのか
財布から金を取り出し
男の手に握らせた

「これ あげるから…
もうこんな事しちゃ駄目よ」

「なっ…」

呆気に取られ
眼を瞬かせる
政宗と喜多…

ふにゃりと
呑気に笑う白雪

男はみるみる顔を紅潮させ
屈辱に震える手で
白雪の手を弾いた

「っ…ふざけんなっ!」

差し出した手を弾かれ
白雪がよろける

政宗が瞬時に鯉口を切り
喜多が白雪に駆け寄る

「待ってっ…大丈夫」

白雪が二人を制して
政宗を仰ぎ見て微笑む

「っ…情けは無用……
苦労知らずのお嬢様に
お情け頂戴してまで
生きようとは思わねぇ」

緋色の眼をぎらつかせて
白雪を睨み付ける男

「盗んだお金と
施されたお金とは
何か違うの?」

「あぁ?」

男は白雪の言葉に眉を寄せる

「持ち主から
許可なく奪うお金と
持ち主から差し出された
お金は何が違うの?
どちらも貴方の力で
得た物では無いでしょう?」

白雪は優しい声で
微笑みを絶やさない

「泥棒は仕事じゃないわ
泥棒するのは物乞いと同じ」

「っ…」

男は自らの腕前を
誇りにさえ思っていた

白雪の残酷な宣言を
聞くまでは……

地面に落ちた金を拾い上げ
そっと男の手に握らせた

「っ…おいっ!いらねぇ……」

「貴方の手…綺麗ね」

「は?」

「細くて長い指で
とても器用そう」

唐突な言葉に困惑して
どうすればいいか
分からなくなる

「…商売道具だからな」

柔和な顔で話しかけられ
思わずそう答えてしまう

「商売…ふふ…そうね…
手先が不器用じゃ
泥棒出来ないものね」

笑う白雪を怪訝な顔で見上げる

「私の手どう思う?」

白い細腕を目前に
突き出して白雪が問いかけた

「…どうって…」

目の前にあるのは
細くて小さい
まっ白でか弱げな女の手

「すぐ折れちまいそうだ
苦労知らずの姫様みてぇな手だ」

「ふふ…そう見える?
私はこの手で
この着物を縫ったの」
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