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イケメン戦国~捕らわれた心~

第12章 織田家の姫君


「田畑の鼠よけに植えてるんだ
球根には毒があるから
不用意に触るなよ」

「毒?綺麗だけど
なんだか怖いね……」

美しい緋色の絨毯を眺めながら
ゆらゆらと馬に揺られ

暫く行くと政宗の予想通り
町並みが見えてくる

大きな宿場町ではないが
そこそこ賑わいのある町だった


これまでは
山を突っ切って道なき道を
早馬を飛ばして
駆け抜けていた政宗

こうして
ゆっくりと進むのも
なかなか新鮮で面白いと

安土から白雪を
連れ帰った時は
なかった余裕を感じる

平静を装っていたが
自分の故郷に連れ帰る
興奮に呑まれて
余裕を欠いていたと
今なら分かる

(俺もまだまだだな…)

ちらと白雪に視線を移し
その顔に疲労を見てとる


(今日はここまでにして休ませるか…)


宿の手配と
馬の世話を家臣に任せ
白雪達と茶屋に脚を向けた

長椅子に腰掛け
団子と茶を口にすると
青みを帯びていた
白雪の顔にやっと赤みが差す

「はぁ…生き返る」

「…えぇ本当に」

馬を乗りこなし
剣術も嗜むとは言え
白雪より二回りは上の喜多も
疲弊の色を隠せずにいた

「明日は山越だ…
今夜はゆっくり休めよ」

二人にむけて声を掛けた時
嫌な視線を感じ取った

「…………」

顔を動かさず気配を追う

(一人か…)

茶屋の陰に男の人影を認めた

ここは信長の領地とはいえ
すぐ隣は武田軍の領地…武田軍は
あの上杉軍と同名を組んでいる

政宗の頭に
色違いの眼に
白雪写す敵将の顔が過った…

何かないとは言えなかったが
政宗は男の気配に
殺気を感じない事に気が付く

(……武士じゃ…ないな…
賊の類いか…どのみち
女連れでは分が悪い
向こうが仕掛けて来るまで
静観といくか……)

「食べないの?」

すっかり顔色の良くなった白雪が
団子を手に政宗に笑顔を向ける

(っ…たく…呑気な顔して)

「あぁ お前食べろよ」

「いいの?」

「腰骨が当たるから
もっと食って肥えろ」

「なっ…」

「確かに白雪様は
食べる割に細いですねぇ」

「喜多さんっ!食べる割りにって」

「白雪様 何度も言いますが
喜多とお呼びください」

反論を許さぬ調子で
ぴしゃりと言いきられ
思わず謝る白雪

「あっ…すいません」

政宗が堪えきれず
喉の奥で笑いながら
肩を揺らしたその時
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