第11章 意地悪な花婿
「ふっ……その顔じゃ
ここから出られないな」
蕩けた顔で政宗の腕に
しがみつく白雪
「っ…駄目って言ったのに」
「俺はしたいようにする
嫌なら拒めって言っただろ?」
「……拒んでも気にしないくせに」
「ははっ…わかってんじゃねぇか」
「…意地悪」
「嫌なのか?」
「……もぉ!」
振り向いた白雪が
ひと口大に切られた
人参を政宗の口に放り込んで
逃げる様に駆け出す
「むぐっ……おいっ!」
「っ…あはは……
ちゃんと切れてたでしょう?」
「だーめーだ 不合格」
「い・ぢ・わ・る!」
子供の様にじゃれあいながら
幸福を噛み締める
真綿の様にふわふわとした
頼りなくも 美しく
高潔で強い心を持つ
未来から落ちてきた女に
心を奪われた
生き方を変える事も
厭わない程に
誰かとの幸福な未来など
望まないと決めていた男が
花婿となる決心をした
愛しくて意地悪な花婿に……