第11章 意地悪な花婿
「それより…今日は旨いもん
作ってやるから楽しみにしてろよ」
女中からお茶を受け取り
喉を潤し 一息つくと
捕らえた獲物を
どう料理するか考えだす
「…なにか捕まえたの?」
「この俺が
手ぶらで帰ると思うか?」
「…そうだよね」
複雑な表情の白雪に
政宗が言葉をかけようとすると
喜多が先に口を開いた
「鷹狩りは ただ獲物を
狩るだけではないのですよ」
白雪が驚いた様に喜多を見る
「娯楽の為ではなく
民情視察
身体鍛錬と家臣等の剛弱究明
家臣の知行所支配の実態把握
他領国の情勢探索
地方支配の拠点づくり等々
領主としてそれはそれは
数えきれない程の……」
白雪が目を丸くして
捲し立てる喜多に
ぽかんを口を開ける
「要は 郊外に出て民の様子を察し
森を駆け回る事で 自分と家臣の鍛練も
兼ねてるって事だ…勿論捕った獲物を
口にする事で剛健な身体も作れる
無駄な殺生をしてる訳じゃない」
呆気に取られる白雪の
頭を撫でながら
喜多の言葉を補足してやる
「政宗……凄いね」
「惚れ直したか?」
偉そうに笑って
白雪の肩を抱き寄せた
「本当に何でも
出来ちゃうんだね」
感嘆する白雪に向かって
「出来る様に
お育て致しましたから」
喜多がもっと偉そうに
胸を張るから思わず笑う
「私も頑張らなきゃ……」
「白雪様も素晴らしい
才能をお持ちですよ」
「絵と裁縫の才は俺が保証する
それに茶と花も達者だったろ」
「小さい頃から習ってたから…」
「へぇ…どうりで…」
「茶道華道の免状なら
直ぐにでもお渡しできると
言われておりますよ」
喜多は出来のいい生徒を
自慢する様に誇らしげだ
「まだまだだよ…」
白雪は納得いかぬ様子で
眉を潜める
「時間はあるんだ
ゆっくりやればいい」
ぽんっと頭に手を置き
そう言いながら 立ちあがる
「取り敢えず 今夜は旨いもの
食べて明日から頑張れ」
笑顔を向けて
白雪の頬を撫でる
嬉しそうに頷く
白雪をの顔を確認すると
仕留めた獲物を
捌きに家臣らと庭を離れた
「……行っちゃった」
「ふふ 本当に仲がよろしくて…」
「あっ…すいません」
白雪は触れられた頬を
隠すように両手を添えた