第4章 適正試験
俺の思いとは裏腹に、教官が何やら指示を出す。
ピクリと眉が動き、俺はカチャカチャとベルトを外しているトーマスに目を向けた。
「もう一度やってみろ」
互いのベルトの交換が終わったエレン。
そしてそれを見下ろす教官。
俺は、事の意味が分からず、眉を寄せてその光景を見る。
ゆっくりと上がっていくエレンの身体。
頭から落ちる事はなくて……
あれだけ、下に、下に、ぶら下がってたエレンが何故かバランスが取れちまった。
………何でだ?
「装備の欠陥だ。貴様が使用していたベルトの金具が破損していた。正常なら腰まで浮いた状態から反転しても地面に頭をぶつけられる訳がない。」
想像していなかった事態に目を見開く。
ハァ!?
ってー事は………
「では……適正判断は………」
「問題ない……修練に励め。」
……マジかよ。
こんなオチって有りなのか?
ふざけてんじゃねーぞ。
クソッ。
ギリ。奥歯を噛み、エレンを睨む。
『……良かった』
隣から聞こえた安堵の溜息。
エレンを見るミサキの表情は、心底安心したように眉を下げていて、こんな些細な事にすら嫉妬してしまう俺自身が、酷く汚く見えた。
ミサキだけじゃない。
エレンを見守っていたみんなの安心したような表情。
「なんとかなったようだな。」
「目で[どうだ!]って言ってるよ。」
アルミンは同郷だからまだしも、ライナーまで心配するなんておかしな話だぜ。
「いや違う。これで私と離れずにすんだと思って安心してる………」
ミカサの一言に場が凍った。