第35章 sweet
今年の智さんの誕生日は平日。
だから、その前の週末に恒例と化しつつある女装での外デートでお祝いをした。
智さんと一緒に生きていくと決めて、男同士の付き合いを世間に知られても大丈夫、と思えるようになったけど、それでも、やっぱり男同士で外で腕を組むことは出来なくて、特別な日には女の子の格好をしてデートしてる。
家の中だけでも十分触れ合えているんだけど、外に出て手を繋いだり、腕を組んだりするとまた違ったドキドキを味わえてそれだけで幸せを感じる。
そんな甘い週末デートを楽しんだ翌日。
智さんの誕生日当日の今日。普通に仕事をして、帰宅して、念願のひとり手料理で智さんの誕生日をささやかながらお祝いした。
お世辞かもしれないけど、智さんから『旨いっ』って言って貰えてるとそれだけで幸せになる。
で、今、食事を終えて食器を洗おうとしてるんだけど…
「あ、の…智さん?」
「ん、なに?」
「あっ…」
「どうした?」
「どうした…じゃなくて…あ、んっ…」
今日は食器洗いもひとりでやると言った俺に対し、『うん、よろしく』と言った智さん。
なのに俺がシンクの前に立つと、ふらふらとキッチンにやって来て、俺の背後に立ったかと思ったら腰に腕を回し背中に張り付いた。
それだけだったらまだ何とかなったけど、俺の肩に顎を乗せ、こちらを向いて話すから耳に息が掛かって擽ったい…というよりも、ゾクゾクしちゃう。
それをわかってるクセに、素知らぬふりして手をシャツの中に忍ばせてきた。
「翔、早く片付けて?俺、スイーツ食べたい」
「あっ…やぁっ…」
耳たぶを甘噛みしながら優しく肌を撫で回す。こんなんじゃ集中して洗い物なんか出来ないよ…