第32章 麗しのキミ
それからの俺は足しげく智さんの元へ通い密着取材をしていた、が…
何を質問してもまともな答えが返ってこない。
「ん~、翔ちゃんならわかるかなぁ…」
とか
「僕じゃわからないから翔ちゃんに聞いて」
なんて答えばかり。
はぁ~、こんなんなら翔さんが取材すればいいんじゃないか?てか、翔さんなら取材すら要らないんじゃないか?
この前みたいに近所で絵を描くときはひとりでふらふらっと行くみたいだけど、遠出するときは翔さんが連れて行ってたって聞いたときはさすがに驚いた。
「翔さん恋人いるのに休みの日智さんといたってこと?」
「うん、そう」
「翔さん何も言わなかったの?」
小首を傾げる智さん。
「何を言うの?何も言われたことないけど」
「翔さん連休なんてなかなか取れないよ?それなのに恋人じゃなく智さんといたの?」
「あぁ、うん。翔くんの恋人、すっごくインドアの人なんだよね。だから旅行とかしなくていいんだって」
それにしても相手の人も相手の人だな。恋人が自分以外の人間としょっちゅう一緒にいるのになんとも思わないのか?
「それに僕、翔ちゃんに恋人いるって知ったの最近なんだ」
「最近?」
「うん。結構長い付き合いらしいんだけど、僕が気を使うと思ったらしくて黙ってたんだって」
恋人がいるのに智さんのこと考えて内緒にしてた?どれだけ大切にしてたんだよ…
「智さんはショックじゃなかったの?翔さんに恋人がいるってわかったとき」
「ショック?なんで?」
「恋人が出来たことはもちろんだけど、内緒にされてたことも含めて」
「別に何とも思わなかったよ?内緒にしてたことも翔ちゃんがそう判断したならそれが正解だもん」
おいおい、大丈夫か…
翔さんが離れるって言ったとき智さんが不安そうにしたのわかったわ。翔さんさえ近くにいれば恋人がいようが関係ないんだ。
こんなに依存してるのに俺が翔さんの代わりになんてなれるのか?