第32章 麗しのキミ
「あの…松本さん?」
大野さんが遠慮気味に声を掛けてきた。
「翔ちゃんが言ったことあまり気にしなくていいからね?」
「どの部分?」
「だから…僕が、その、松本さんに興味ある、とか…」
「何でです?」
「だって、迷惑でしょ?翔ちゃんに僕の世話係押しつけられたみたいで…」
「そんなことないですよ?元々俺『大野智』のファンですし、大野さんの世話出来るなんて光栄ですけど?」
「でも…僕、変に気を使われたくないし…」
「だったら友達から始めませんか?」
「友達?」
「はい。大野さん友達少ないって言ってたでしょ?だから友達から始めましょ?」
「いいの?こんな変わり者相手にして迷惑じゃないの?」
不安そうに俺を見つめる大野さんが可愛い。
だから俺は安心して貰えるように微笑んだ。
「全然…それにこれから取材するんですよ?大野さんのことよく知らないと。いい加減に取材したら翔さんに怒られる」
「あ、そっか…翔ちゃん仕事には誰よりも厳しいもんね」
「そうですよ。だからいい取材出来るように俺に協力してください」
「うん。わかった。ありがとう、松本さん」
さっきの表情も可愛かったけどニコッと笑う大野さんは更に可愛い。
「じゃあ、まずその『松本さん』止めましょうか。友達相手に『さん』付けはちょっと堅苦しい」
「何て呼べばいいの?」
「潤でいいですよ?翔さんもそう呼んでいるので」
「潤…か、わかった。じゃあ、潤も僕のこと大野さんって呼ぶの止めて?それと敬語も」
「ん~、じゃあ智さんでいい?」
「智さんかぁ…」
ちょっと不満そうな大野さん。
「さすがに年上の人を呼び捨てには出来ないから…」
「わかった、智さんでいいよ」
「これからよろしくね、智さん」
俺が手を差し出すと智さんは嬉しそうにその手を握った。
「うん、よろしく…潤」