第32章 麗しのキミ
「だからさ、智からお前の話聞いたとき正直驚いたよ」
翔さんが俺の方を見て笑った。
「え、俺の話?」
「そう、さっき智が言っただろ?俺が潤を送り込んだのか?って疑われて、そんなの知らない偶然だって言ったら凄く嬉しそうな顔したんだよ。
智が他人のこと気にするなんて初めてに近かったから吃驚した」
「しょ、翔ちゃんっ」
ニヤッと笑う翔さんの隣で慌てる大野さん。
「俺のこと気にしてくれてた?」
「おお、そりゃあもう…お前に会った直後に俺の部屋に乗り込んできてさ、智にしては凄い勢いで詰め寄られた」
にやにやしながら大野さんを見る翔さんの腕を大野さんが掴んだ。
「翔ちゃん、もう止めて…」
恥ずかしそうに頬をピンクに染める大野さん。
もしかして翔さんと大野さんってそういう関係じゃないの?
「あの、それってどういう…」
「さあな…智がどういう理由でお前に興味を持ったのかは本人じゃないと…智の事だから本人もちゃんとわかってないかも。
ただ俺的にはそろそろ智のナイト役は潮時かなって思ってたから誰かに後を任せたいんだよね。
潤…お前、智のこと気になってたんだろ?溜め息吐くくらいには」
え、バレてた?確かにこの一週間、心ここに有らずだったかも知れないけど。
「え?翔ちゃん僕から離れちゃうの?」
「そんな不安そうな顔するなよ。これからもお前のことちゃんと見てるよ?
でもさ、いつまでもお前に掛かりっきりだとアイツも可哀想だから」
「そっか、そうだよね…ごめん。邪魔だったよね、僕の存在」
「謝らなくても大丈夫だよ、アイツが何か言ってた訳じゃない。ただ俺がそうしてやりたいなって思っただけなんだ」