第31章 future of hope
抱きしめていた腕をはなすと雅紀は指輪ケースから指輪をひとつ取り出しケースを閉めてポケットにしまった。
雅紀の左手が俺の左手を取ると抜き取った指輪をゆっくりと薬指にはめていく。
はめ終わってからも視線が薬指に釘付けだった。
「カズさん…」
「へ…」
「俺にもつけてくれるかな?」
雅紀が指輪ケースを開いてこちらに向けた。
俺は残ってる指輪を掴み雅紀の左の薬指にはめた。
「ありがとう」
雅紀のお礼の言葉と同時に今度は痛いくらい強く抱きしめられた。
いつもの俺だったら『痛いよ、馬鹿』って言っちゃうのに、今はその痛いくらいに抱きしめてくれる雅紀が愛しい。
雅紀の背中に腕を回し俺も力の限り強く抱きしめ返した。
「…雅紀…ありがと…大好きだよ…」
恥ずかしくて…でも俺もちゃんと雅紀に気持ちを伝えなくちゃ駄目だって思って小さい声でそう言うと、雅紀の腕が俺から離れ、その瞬間抱え上げられていた。
「ひゃっ…」
慌てて雅紀の首にしがみついた。
「お風呂とベッドどちらにしますか?姫?」
楽しそうに笑う雅紀。
「ん~、まずはお風呂かな?」
「畏まりました…」
逞しく安心出来る場所が俺だけの占有地になった。
風呂場に着くと雅紀が着ていた物を脱ぎ、その後俺のウィッグを外しドレスを脱がせる。
一糸纏わぬ姿になった俺たち…雅紀が俺を抱きしめる。
「やっぱこの姿が一番綺麗…」
「俺に服着るなって?」
「ふふっ、それは駄目。一番は俺だけが知っていればいいから…他の誰にも見せないで?」
「お前もな…俺以外のヤツに触らせるなよ?」
目の前の雅紀の喉元にキスをした…ビクッと震える雅紀の身体。
クスッと笑う声が聞こえ上を見ると熱い視線で俺を見つめる雅紀がいた。
「誘ってんの?」
「ふふっ、今夜は初夜だからね…」
雅紀はニヤっと笑うと俺のことを抱き上げた。