第29章 可愛いアナタ
「えっ、あ、うん、い、いけど…」
ちょっと俯いて言い淀んだ。そりゃそうか、いきなりだもんな。
「やっぱいいや、また今度にしよ?いくらなんでも急すぎたよね」
翔ちゃんは勢いよく顔をあげると俺の腕を掴んだ。
「あ!違うの!俺も雅紀としたいよ、でも、俺…初めてだから、どうすればいいのか…」
そっか、翔ちゃん初めてなんだ…まあ男と経験あるって言われたらそれはそれでちょっとショックかも…ふたりで暮らしはじめてからは恋人の存在を感じたことないんだから。
そういう俺も何年振りだろ…翔ちゃんのこと意識し始めてからは彼女作ってないもんなぁ。
「あのね翔ちゃん。俺も男の人抱くのは初めてだから上手く出来るかわからないけど、出来るところまでやっていい?」
「出来るところまで?」
「うん…だって俺も翔ちゃんのこと抱きたいし、翔ちゃんも俺に抱かれたいって思ってるならふたりで進むしかないでしょ?菊池にアドバイス貰ってもいいけど部下に聞くのもなんか恥ずかしいしね?」
「あっ!菊池!」
翔ちゃんが急に動き出した。
「なに?どうしたの?」
「菊池が帰る間際に困ったときはメール見てって」
「は?困ったとき?」
「うん…」
翔ちゃんがスマホを手に取り操作する。
「あ…」
翔ちゃんの顔が紅くなった。
「翔ちゃん?何て書いてあったの?」
「えっと…『これを読んでるってことは俺のお手柄ですね。俺の使っていたクッションの下に必要な物を置いておきました。それを使ってよ~く解してください、と相葉さんにお伝えください。それでは無事愛し合えることをお祈りしてます』だって…」
俺は菊池が座っていたクッションを持ち上げ下から出てきた小袋を拾った。
「ローションか…」
なるほどね、これを使って滑りを良くしろと…ナイスアドバイス!菊池。