第28章 forever
《智side》
桜の木を見上げる翔…17年前のさくちゃんを思い出した。
クリっとした大きな瞳、今と変わらない柔らかな雰囲気…
きっとこの先も翔は変わることがないんだろうな…
「桜はいつでも綺麗だよ…」
そう言うと翔は嬉しそうに微笑んだ…お前のこと言ってるんだけどな…わかってる?
きっとわかってないよなぁ…お前らしくていいんだけど。
「なぁ、翔…17年前、ここで俺と最後にした約束覚えてる?」
桜の木を見上げ翔に聞いた。
「勿論覚えてますよ?と~っても素敵な想い出ですから」
「そっか…俺との約束は覚えていてくれてたんだ、良かった」
「当たり前じゃないですか」
「じゃあさ、その約束果たして貰っていい?」
翔の方に向き直り確認すると翔は驚いたように俺を見た。
「智さん?」
「俺たちもう大きくなったよな?」
「はい…でも…」
「俺との約束破るの?」
「いいえ!そんなこと…」
首を横に振る翔。
鞄にしまっておいたケースを取り出しそこからシルバーの指輪を抜き取った。
「左手出して」
翔が差し出した手の薬指にそれをはめる。
「智さん…」
翔は目に涙を浮かべ、自分の左手にはまっている指輪をじっと見つめていた。
「うん、やっぱり翔にはその色だな」
俺が翔の為に選んだ指輪には小さなピンクトルマリンの石が埋め込まれている。
「綺麗…桜色…」
「それ結婚指輪だから」
「え⁉でも…」
「わかってるよ、実際は不可能だって…でもさ、俺はけじめをつけたい。ふたり一緒に生きて行くために、今の二部屋での生活を止めてふたりで暮らす家をふたりで探そう?」
俺はもうひとつ同じデザインの指輪を掌にのせた。
「つけてくれる?」
翔の目に溜まっていた涙が溢れ頬を伝った。
「はい…」
指輪を摘まむと桜の蕾が開くようにフワッと艶やかに微笑んだ翔。
俺の左の薬指にそれをはめた。
「ありがとう。翔…愛してるよ」
翔の唇にそっとキスをした…翔の頬はやはり17年前と同じ桜色をしていた。
どんな時も変わらず綺麗に咲く俺の桜…
俺の傍で永遠に咲き誇っていて…
『ねぇ、さくちゃん
大きくなったらオレのお嫁さんになってくれる?』
『さとくんのお嫁さん?
ん~、さとくんならいいかなぁ』
『ほんと⁉じゃあ、約束ね?』
『うん、約束』
End 🌸