第19章 What is your dream ? #2
俺とカズのことを知っていたのは雅紀だけじゃなかった。
担任に用事を頼まれクラスの女子と職員室に向かっていると
「松本くんて、第二中の松本くんでしょ?」
「そうだけど?」
「私ね、小学生の時野球やってて、松本くんのチームと対戦してるのよ?」
「え?ほんと?」
まさか女子からそんなことを言われるとは思ってなかったが、確かに中学校までは男子に混ざって女子が数人野球部に所属しているチームもあった。
「最後の大会で松本くんたち優勝したでしょ?あの時準決勝で戦ったの」
「そうだったんだ…」
「凄い印象に残ってるバッテリーだったから名前覚えてたの。中学の新人戦の時も新聞でふたりの名前見つけて、まだ一緒に頑張ってるんだ、って思ったら嬉しくなっちゃった」
「俺たちそんなに印象的だった?」
「うん、キャッチャーって女房役って言うじゃない?まさにそんな感じだったから。
ピッチャーに声掛けて盛り立ててあげたり励ましてあげたりして、ピッチャーもそれにちゃんと応えるのよねぇ…
小学生なのにそれが出来るって凄いなぁ、って感心しちゃった」
俺がカズの女房役…思わず顔が緩む。
「ねぇ、隣のクラスの二宮くんってピッチャーの子でしょ?ここで一緒に野球やるの?」
「いや、もう野球はやらない」
「そうなんだ…ちょっと残念、いいバッテリーだったのに」
「サンキュ」
本当に残念そうな顔をしてそう言ってくれた事が嬉しい。
野球は辞めてもカズの女房役は誰にも譲らねぇよ。
てか、女房役はカズか…俺の子供の頃からの夢はカズを嫁に貰うことだからな。