第1章 promise
大きな桜の木の下で上を見上げていたら
「キミ、だぁれ?」
って声を掛けられた。
その声がする方を向いたら真ん丸な目をした、同じ年くらいの女の子が立っていた。
余りにも可愛い子だったから、見とれてしまって返事が出来ずにいた。
いつまでも返事をしないせいか、その子が首を傾げて近づいてきて
「キミ、だぁれ?」
って、もう一度聞かれ慌てて答えた。
「あっ、オ、オレ、さとし」
「さとし?どこに住んでるの?」
「えっと、住んでるのは東京
今は母ちゃんのばあちゃんのところに遊びに来てるの」
「そうなんだぁ」
って笑う顔も一段と可愛かった。
「なにしてたの?」
「家に居てもやることなかったから、桜見にきた。」
「あ~、この桜キレイでしょ?」
って、上を見るから
「うん、すっごくキレイ」
って言って、俺も見上げた。
「さくちゃん、何してるの?」
公園の入り口から呼ぶ声がする。
隣に立っていた子が振り向き
「あ、ごめん。今いく~」
こちらを向くと
「ごめんね、友達が呼んでるから行くね?」
その子が駆け出したから
「あ、あの」
って、急いで呼び止めて
「また、桜見に来る?」
って聞いた。
大きな目をさらには大きくしてちょっと驚いてたけど
「うん、また明日見に来るね
バイバイ、さとくん」
手を振って走って行った。
その時の俺は、子供のくせに舞い上がっていた。
『さくちゃん』かぁ、あんな可愛い子がこの世に存在するんだぁ。
しかもあっちから声を掛けてくるなんて、『これって運命?』なんてマセた考えをしていた。
後からさくちゃんに聞いたら、田舎町だから知らない人がいることが珍しくて声を掛けたらしい。