第15章 愛のかたまり
「ほんとに大丈夫?」
「大丈夫だって、ほんと心配性なんだから翔くんは」
今日はクリスマスイブ。翔くんが何ヵ月も前からホテルを予約してくれてて、ふたりきりの空間で甘いひとときを過ごそうと予定を立てていた…のに
「はっ⁉データが飛んだ?何やってんだよ、お前!明日使う資料だろ?」
会社の後輩から翔くんに電話が入ったのは今から20分前…
「あり得ないんだけど!なんで今日なんだよ!」
電話を切ってからも翔くんの怒りは収まらず…
「翔くん、ここで騒いでもしょうがないでしょ?早く行って仕事終わして来ちゃいなよ」
「ん~、わかってるけど…今日は1日中智とイチャイチャしようと思ってたのに~!」
「今日は、って…いつもイチャイチャしてるじゃん」
「そうだけど、今日は特別でしょ?クリスマスイブだよ?世の中の恋人たちがみんなイチャイチャしてんだよ?なんで俺だけ仕事なんだよ…」
翔くんの撫でてる肩が更に撫でた。
「あのね?翔くん、翔くんだけじゃないでしょ?世の中の人が働いてなかったらお店だって休みになっちゃうよ?」
「そうなんだけどぉ、俺たちが付き合い出して初めてのクリスマスイブだよ?ずっと楽しみにしてたのに…」
「そんな落ち込まないでよ、夜には終わるんでしょ?早く行けばその分早く終わるんじゃない?」
俯いていた翔くんの顔がガバッと上がると
「そうだ、そうしよう!智、俺行ってくる!」