第10章 最愛のひと
俺の上で動かなくなった翔。そっと横に横たえると幸せそうに微笑んで息絶えていた。
「翔、ごめんな…」
そっと翔の頬に触れ撫でた。
3つ用意したカプセル、1つは空だった。どっちが飲むかは賭けだった。
許せなかったんだ、最愛のねぇちゃんが愛されてもないのに抱かれてることが。翔が悪い訳じゃない…翔に無理矢理結婚させたのは俺なんだ。そんなことは頭ではわかってる。
翔が少しでもねぇちゃんの事を愛情を持って抱いてくれてたら俺の気持ちは変わったかもしれない。
でも翔は俺だけだと言った。ねぇちゃんに俺の影を重ねて抱いたと…そんな事許せなかった。
もう、俺も限界だったんだよ…どちらかひとりが消えればいいと思った…でも俺が選ぶことは出来なかった。
だから薬を3つ用意して後は運命に委ねた…3つ用意したのはふたりで死ぬのもアリだと思ったから。長い付き合いだもんなそのくらいはしてやるよ…でも俺は生き残った。
残った最後のカプセルを手に取りカプセルを開いた。
「え?」
カプセルは空だった…どういう事だ?
まさか…翔、あの時俺にカプセルを飲ませなかったのか?