第10章 最愛のひと
ベッドの上に移動して俺の上に覆い被さりキスを続ける翔…一つ一つの行為を惜しむように時間を掛ける。
ずっと辛そうな表情して…真面目なお前にはこの状況が堪えられないんだろ?
俺の事を愛してるのに別の人と結婚して好きでもない相手を抱く。それもこれも全部俺の為…
お前が苦しんでるのはわかってた。
解放してやるよ、その苦しみから…会社の提携業務も終わったし、ねぇちゃんとの入籍も済ませた。お前がいなくなっても家の会社は立て直せる。
「しょ、お…ちょ、と…ま、て…」
「なに?」
俺はベッドから降り荷物の中からビニールの小袋を取り出しペットボトルの水を持ちベッドに戻った。
「どうしたの?智」
「翔、一緒に死のうか…」
そう告げると翔は少し驚いた顔をしたけど真剣な表情で俺を見つめる。
「いいの?智はそれで」
「うん、いいよ…お前辛いんだろ?もう限界なんだろ?」
翔の手が俺の頬に触れると嬉しそうに微笑み一筋の涙を溢した。
「ありがと、智…」
袋から3粒のカプセルを取り出し掌に乗せた。
「これ一緒に飲んでさヤリながら死のうぜ…一番幸せな瞬間に死ねたら最高じゃね…」
翔が一粒手に取ると俺に差し出した。
「智が飲ませて」
「あぁ、いいよ」
カプセルを口に入れ水を含むとそのまま翔にくちづけた。
翔の喉がゴクリとなり薬を飲み込んだ。
「俺にも飲ませて」
残った二粒を翔に見せると翔が一粒つまみ口に入れた。同じ様に水を口に含み俺にくちづける。
俺の喉を水が通った。