第9章 as it is
「相葉です、よろしくお願いします」
職場に新人としてやって来たあいつは爽やかな笑顔でそう挨拶した。
スタイルもいいし、俺とは真逆の人間…それがあいつの第一印象だった。
こんな爽やかなイケメンくんの指導係りかぁ、ちょっとやりづらいなぁ。智に付いた子もイケメンくんだし智よりも背が高い、今年は見た目重視で採用したのか?
「二宮さん、よろしくお願いします」
さっき見せた笑顔よりも更に爽やかな笑顔を見せる。
「あぁ、よろしくな」
さて、見た目だけじゃないことを祈るよ新人くん。
こいつが見た目だけで採用されたんじゃないことはすぐにわかった。
どの営業先でも気に入って貰えた。
もちろん営業マンとして見た目がいいのは武器になる、でもそれだけじゃなかった。相葉は人の懐に入るのが上手い。
人懐っこい笑顔と優しい物言い、話をし終わると大抵の人間がご機嫌になってる。
ほんとに俺とは真逆のタイプだ。
会社だから付き合うけど、私生活では交わることのないタイプだな。
「二宮さん、二宮さんのこと『和さん』って呼んでいいですか?」
あいつがそんなことを言い出したのは入社して3日目。今まで俺を名前で呼びたいなんて言った奴はいなかった。実際呼んでるのも親くらいだし。
「やだ」
たった一言で拒否をした。別に呼ばれ方なんてどうでも良かった、名前で呼びたいなら呼べばいい。
ただ天の邪鬼な俺は素直にいいよって言ってあげられないんだ。