第8章 距離感
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【愛おしいと思っている】
その言葉が頭から離れない。
そして唇の感覚、舌の厚さ、時折聞こえた吐息、私の手を握っていた大きい手、密着していた鍛えられた身体。そして最後に腰に添えられた手……………
その感覚全てが今でも脳裏に焼き付いている。
愛おしい、ってどういう意味なんだろう。色んな意味として捉えることができるが、それだとあのキスは何だったのだろう。
気になって夜も寝れない………
答えを聞かせて欲しい………っていうことは…………まさか、ありえないけど…………そういう、ことなのかな………
『あああだめだぁぁぁ』
あれからずっとエルヴィンさんのことを考えてはモヤモヤしていた私は布団を頭からかぶり強制的に寝るという強硬手段に出た。
明日…………会えたら…………聞いてみよう…………
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『内緒にしておくんじゃなかったのか?』
『あぁ、もちろん。』
『じゃあ、何故…………』
『…………俺にもわからないんだ』
『………まったく、お前がここまでになるとはな、新たな発見をしてしまった』
『やめてくれミケ』
どちらからともなく部屋には低い笑い声が静かに響いた。