第8章 距離感
『あ、こんばんは』
『エルヴィンから本を借りたのか?』
『はい、2冊ほど借りさせていただきました。』
『そうか………』
『ミケさんはエルヴィン副分隊長に用事ですか?』
『まぁ………ちょっとな』
ミケさんが言葉を濁らせながら口元に手を置く。
『それじゃあ私は失礼しますね、おやすみなさい』
その場から私は去ろうとするとミケさんに腕を掴まれる。
『へっ………』
ミケさんは少しだけ私に顔を近づけ首筋の、匂いを嗅いでくる。
……どうしたんだろう、今日2回目なはずなのに………
『ど、どうしたんですか…………?』
『……………いや、なんでもない、引き止めて悪かった、おやすみ』
何かを確信したように1つ頷くと掴んでいた腕を離してくれる。
『あ………は、はい………』
変なミケさん。
私はぺこりと頭を下げて自室へと戻った。
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『あぁ、ミケか。入りなさい』
『エルヴィン、お前アンに何かしたのか』
『…………なぜ、そう思った』
『彼女からお前の匂いがした。今までで一番強い匂いだ………まるでキスをするくらい密着したような……』
『…………そうだったな、ミケは鼻がよく効いていたな…………』
『…………図星なのか』
『…………何も聞かないでくれ。』
『お前らしくないぞ、俺はお前を危ない橋は渡らないやつだと認識していたはずだが』
『ふふ、危ない橋、か。』
まったく、その通りだよミケ…………