第19章 悲しみとともに
「……君も辛かったね」
ふと、顔を上げると分隊長は私を見つめていた。
一見表情は変わっていないように見えるが、
私にはわかる。心配してくれている表情だ。
「っ...…」
思わず分隊長の優しさに久しぶりに触れ涙があふれる。
トーマスが戦死したことは知っていたかどうか不明だが、分隊長ももちろん人間だ。悲しまないわけが無い。
「っ、ごめ、なさい……」
分隊長の前で泣いたって困らせるだけなのに。
そう思っても涙が止まらない。
「っ...……アン。」
その瞬間、分隊長の大きな身体につつまれる。
「っ!?」
久しぶりの感覚だった。
「……、こんなことしても君を困らせてしまうだけ、だね……」
眉を下げながらそう言うと身体を離してしまう。
「……あ、えっと……」
「じゃあね」
分隊長は振り返らずそのまま部屋から立ち去ってしまった。
「っ...……」
顔が赤くなるのを感じ、そのままその場に座り込んでしまう。
あんなことされたらまた……わたし……
でも、あの時の眉を下げた表情が忘れられない。
「どうして……。あんな表情……するの……」