第12章 Another Story
エルヴィンとアンが仕事に打ち込んでいる同じ時。
地上とは反対である地下街ではある男が喧嘩をしていた。
ここは都にある地下街。
そこには都市が広がっていて、なんらかの事情で地上には住めない人達が暮らしている。
その男もその1人。
男は地上を見たことがなかった。
だが、地上には出ようとは思っていなかった。
自分はここで十分。
喧嘩が非常に強く、今喧嘩している相手も降参状態である。
『に、にげろぉ〜!!』
この男にボコボコにされた相手……4名ほどだろうか。転ぶように逃げていった。
『チッ……汚ぇな』
10代くらいだろうか。この男は背は小さく鋭い目つきで綺麗な黒髪をしていて肌が白い。なので返り血がとても映えるのだ。
口の中を切ったようでペッとその場に吐き捨てると頬に浴びた返り血を綺麗なハンカチで拭き取り、
拳についた血を拭き取る。
そしてそのハンカチをその場に捨てる。
人の血がついたハンカチは用済みらしい。
『どけ、見てるんじゃねぇ』
野次馬で見ている人たちを今すぐ殴りそうな恐ろしい表情を浮かべながら睨む。