第4章 ヌガー・ド・モンテリマール
♛大野智
俺の名前は、大野智。
大企業を束ねる社長だ。
みんな俺の事を羨ましそうな目で見てくる。
この歳で、社長という役職に
就いていて、容姿もそれなりにいい。
…実に、完璧だろう?
色んな女が寄ってくるのも
不思議じゃない。
…だけど、俺には
愛する恋人がいる。
…それは…。
和「…社長。二宮です。
入ってもよろしいですか?」
今、社長室の扉をノックした
この男。
俺の秘書の、二宮和也という男である。
智「…ああ、入れ」
和「失礼致します。…こちらの書類を
お持ち致しました」
二宮は、澄ました顔で
俺のデスクに書類の束をドサリと置いた。
…こいつ。
秘書としては有能なのに、恋人としては…。
和「…私の顔に何かついてますか?」
智「…え?…あ、いや…何も…」
和「そうですか。…確認、お願いしますね?」
智「ああ。…分かってる」
…俺が、目でお前に語りかけるように
訴えていたのに…。
お前は、絶対それに気付いているはずなのに。
…全部、スルーかよ。
少しは、俺の事を仕事中でも
恋人として見て欲しいのに…。
…俺は、二宮に気付かれないように
ため息を吐いた。