第12章 クッサン・ド・リヨン
俺が目にした光景は、信じ難い
光景だった…。
俺の周りで、ふにゃふにゃと動くソレ…。
…黄色くて、ふわふわしてて。
星の形をしてる…クッション。
そう、クッションだ!
俺が小学生の時に、母がくれた
星型のクッション…。
大人になってからも、肌触りが好きで
ずっと持っていたもの。
ソレが、動いてる…。
俺は、目をこすってもう一度目を
ソレに向ける。
けれど…
むにむに、テトテト…。
ぽよんぽよん…パタパタ。
う、動いてる…。
夢じゃない…実際に起こってる。
その星は、俺の太ももの上を歩いたり
跳ねたり触ったり…色々試している。
翔「お、おい…」
ものに声をかけるなんて…。
って思いながらも、動いているんだから
声をかける他なかった。
俺が声をかけると、ソレが
振り返った。
そして…
『やあやあ、僕の主さん!』
翔「し、喋った…っ!!」
ソレには、ちゃんと目も口も付いている。
可愛らしい黒い目。
小さな口、星の角を上手く使って
手と足が出来ていて…。
よく子供が書くような、そんな星の
マスコットみたいなのが、ここにいる…。
『こんばんは、僕はスターです』
翔「…へっ?」
ペコリとお辞儀をする、スターに
呆気に取られるばかりだった。