第12章 芥川龍之介/ Trick or …
こうして、マフィアのハロウィンは始まった。
いつも殺伐としていたマフィア内が、今日だけは賑やかで
逃げるようにその場を後にした。
落ち着かない…
そんな時は決まって行く所があった。
マフィア管轄の、とある書庫。
かつては、坂口安吾と云う男が在中していたが、故有って
今は月尾聖子という女が在中している。
「あれ?芥川さん…?」
「邪魔する」
「はい…あの、如何したんですか、その恰好…」
大きな目を見開いて、驚いている。
無理もない。
こんな格好、首領の命令でなければ絶対にしないからな。
「今日は”はろうぃん”をするという首領命令だ」
「そうだったんですね…いつの間にそんな催しが…(笑)」
「ここにはその通達が無いのか?」
「はい、何も伺っておりませんでした…ここはマフィアと云っても少し特殊ですから。でも、楽しそうですねハロウィン♪」
「何処がだ…」
「ふふふっ」
柔らかく笑う姿が、とても絵になる。
そして、落ち着く。不思議なものだ…。
「そのお姿は聖職者でしょうか?」
「…死神と謳われる僕が聖職者など、似合わないにも程があるな」
「そんなことないですよ!私は、芥川さんを死神だなんて思った事無いですし!!」
「貴様が変なのだ」
「そうでしょうか…??」
「僕は死神で、マフィアの卑しい狗だ」
「でも、優しいです♪」
「…そんな訳…あるはずが無いだろう」
「私は、芥川さんのここでお話している優しいところしか知りませんから」
そう云って笑う。
特に優しくした覚えは無いのだが。
だが彼女にそんな風に云われて、悪い気がしないのも事実。
「芥川さん、少し待ってて下さいね。すぐに仕事を一段落させますので、一緒にお茶でも如何ですか??」
「急かさなくとも良い。今日は特に仕事も承っていないからな」
「そうなんですか?? でももうすぐ一段落着くので、そこの椅子に掛けてお待ち下さい」
「分かった」
静かな書庫で、静かに仕事をこなす姿。
目が合えば静かに微笑む様も、僕の心を穏やかにしていく。
本当に、不思議でならない。
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芥川さんが此所に来ると
嬉しくて緊張しちゃう…///
しかも、今日はいつもと違って神父服で…!!
それも凄く似合ってるから困る…
