第7章 中原中也/黒の世界のノクターン
「それ…」
「あぁ、この葡萄酒? 中也もどうだい?」
「てめぇ未成年だろーが!!」
「えー。いいじゃないか別に。美味しいよ?」
「そういう問題じゃねぇよ」
「あぁ、でも…お子様な中也にこの味はまだ早いかなー♪ 結構渋い味だからねぇ、大人になるまで無理しない方がいいよ?」
「はぁ!!? てめぇに飲めて俺が飲めねぇ訳ねぇだろ!? 貸せ!!!」
そういうと中也は太宰の持っていた葡萄酒をひったくって、全部飲み干した。
「…ぷはっ。どーだ太宰! 結構美味いじゃねーか」
「ちょっと。誰が全部飲んでいいって言ったのさ」
「知るか。ばーか」
振り返って手をヒラヒラと振りながら、中也は歩き出す。
それを見送りながら、太宰はニヤリと口角を上げるのであった。
自分の執務室に戻る頃には、身体の異変に気付いた。
暑い。何故か無性に暑くて息が乱れる。
これが酔うという事なのだろうか。
あの時太宰も少しふらついていたから、きっとそうなんだろう。
今日は早めに寝よう。
そう思ってドアを開けた。
「あ、中也先輩! お帰りなさい!!」
書類整理をしてくれていた聖子が視線を自分に合わせて微笑んでくれた。
ドクン…と胸が高鳴った気がした。
気のせいか…?
「中也先輩…??」
ドアから動かない俺を心配そうに見つめる聖子。
いけねぇ。未成年飲酒がバレる訳には…。
努めて平静に。聖子に今日は戻っていいと伝えなければ。
「聖子…」
「中也先輩、もしかして体調が優れないのでは? 何だか辛そうです…」
「い、いや、別にそんな事は…」
「………。とりあえず座りましょ中也先輩! 今珈琲淹れますね♪」
手際よく珈琲を淹れる準備をする本当に出来た部下である。
とりあえず座って、落ち着かせようと試みた。
未だに暑い。
更には、何故かムラムラする。
最近忙しくて出してないからだろうか…。
「はい、中也先輩!」
「うおわっ!!?」
邪な事考えていたところに急に近くで聖子の声がしたもんだからマジでビビった…。
ぶつからなくて本当に良かった。
こんな状況でぶつかったら、珈琲が零れて聖子に…
珈琲が掛かった聖子の姿を想像してしまい
ムラムラに拍車が掛かる。
何なんだ、今日の俺なんかおかしいぞ。