第6章 森鴎外/学術的興味
「もう立ってられないようだね?」
彼が言うように、何故か脚に力が入らない。
先程脚を切られたから、という理由でも恐らくない。
今まで感じた事のない痺れと疲労感。
更には下腹部が締め付けられるような違和感。
「脚を擦り付けて、どうしたのかな?」
やたらニヤニヤとしながら尋ねてくるこの男には
きっと理由が解っているのであろうに。
腹立たしさのあまり彼を睨み付けた。
「そういう顔しちゃダメだよ?」
私の顎に手を添えてぐっと持ち上げる。
目が合ったところでまた愉しそうな笑みを見せた。
「もっと…シたくなる…」
「!!?」
笑顔のハズなのに狂気すら感じてしまう。
この男は危険。
全身がそう伝えてくる。
「今度は道具を使って客観的に観察するとしよう」
スタスタと一直線に扉へと向かい、部屋を出ていった。
静まりかえった独房で肩で息をする。
先程の狂気を感じてから、上手く呼吸が出来なかった為である。
酸素が欲しくて呼吸を繰り返した。
今まで痛みを感じないせいか、恐怖を覚えることなんてほとんど無かった。
こんな事なら、いっそのこと一思いに殺してくれた方がマシである。
そんなことを考えていると、あの男が帰って来た。
「お待たせ~♪」
何歳かは知らないが、まぁまぁいい歳をした男が
まるでスキップでもしそうな勢いでやって来た。
「実にいいリアクションをしてくれるよね」
「何も言ってません」
「顔に出てるからね?」
ふと彼が手にしている道具が目に入る。
仕様用途を考えてはみるが、全く分からなかった。
「ああ、これかい? 気になる??」
気にならない訳がない。
それも表情で読み取ったのか、彼はカチッと電源を入れた。
大きな機械音が響く。
「きっと気に入ってくれると思うよ?」
そう微笑んだ後、それをイキナリ下に宛がった。
「きゃっ、きゃあああああ!??」
「うんうん、いい声だね♪」
振動が大きすぎて、訳が分からない。
まるで痙攣した様に身体が反応し
意識が…
頭が真っ白になる感覚
「おや、もうイッてしまったのかい?」
本当に何もかもが分からなくなって
頬を伝うこれも涙なのかなんなのかも分からなかった。