第4章 中原中也/葡萄酒よりも甘いカクテルをキミに
「お邪魔しまーす♪」
「別にいちいち言わなくていいっつーの(笑)」
もう何度も来て、夜を過ごしているっつーのに
律儀なやつだ。
そんなアイツの手を引いて誘導し、早速ベッドに押し倒す。
「んで? 何で毎回男装なんてしてんだよ?」
「それ、この状況で聞く?(笑)」
「こんな状況じゃねーとはぐらかすだろ?」
うっ…と言葉に詰まらせてるところを見ると
やっぱりはぐらかして言わねぇ気だったな?
今日は逃がさねぇぞ。
「だって…異能、持ってないし…」
「…は?」
ぼそりと呟やかれた言葉が理解不能だった。
「だから、異能持ってないから中也の敵対組織がやって来たら抵抗出来ないじゃん! 中也の彼女ってバレたら、そーゆー奴等がやって来るかもしれないでしょ…私は、中也の弱味になりたくない…。だから彼女ってバレないように男装してるの!!」
この時、先程のマスターの言葉を思い出した。
『彼女はいつも中原君の事を想っている』
ああ、そう言う事だったのか…。
「…ったく、ばーか。」
「なっ!? 馬鹿ってどういう事!?」
「馬鹿だから馬鹿って言ったんだよ。敵対組織がお前に手を出そうとしやがったら俺が許さねぇ。どんな手段使ってでも抹殺するっつーの」
「抹殺って…(笑)」
「聖子…お前は俺が絶対守る。だから安心して、男装なんかやめちまえ」
「中也…」
どちらからともなくお互いに唇を重ねる。
何度も角度を変えて、求め合う。
もうそろそろいいか…と思って唇を離し、ふとアイツの顔を眺めると
そーいや男装のままだったな…すげぇ違和感っつーか…
なんつーか…なんだ、この形容し難い感情は。
「中也?」
「お前…鏡見てみろって。そしたら俺の気持ち分かるから」
「ん? …あぁ、ソッチに目覚めちゃった?」
「おいマジふざけんなよ」
「冗談だよ(笑) あ、じゃあさ、メイク落とすついでに一緒にお風呂入る?」
あまりにもサラッと誘ってきたが、その提案に乗る事にした。