第3章 第1話
和奏「よしっ」
『open』と書かれたプレートを、細かい細工がびっしりとされているドアノブにかける。
洋菓子店、「Mihaela」の開店時間だ。
店内に戻ると、もうほとんどのお菓子の陳列が終わっていた。
甘い香りが私の鼻をくすぐる。
静寂が漂うこの雰囲気が、私は大好きだ。
ぼーっとしていると…
田中「川野さーん」
和奏「あ、はーい!」
ぼーっとしてるといつも呼ばれる。
なにせ、これから忙しくなってくる時間だ。
うちの店は結構な人気店で、テレビの取材もちょくちょく来る。
なんでも、"ふらっと立ち寄れる秘密のお店"なんだとか。
…ふらっとなのに秘密ってなんだかおかしい気もするけど。
まぁ、この雰囲気の中で食べるお菓子はめっちゃ美味しいってことです!!
この店のオーナー、田中善子さんは、若い頃にフランスに行って修行してたらしい。
そんな人が作るお菓子は美味しいに決まってる。
和奏「(きょうのまかない、なんだろなー)」
さっきクッキーをもらったばかりなのに、もう他のお菓子のことを考える…
自分でもずうずうしいとおもうよ。うん。
でもそんなお菓子を毎日タダで食べられるなんて、私は幸せものだ…とつくづく思う。
田中さんに感謝!!