第2章 林檎一個分の儚さ(芥川龍之介)
それにしても、今日は龍も銀も先に帰ってるかなあ...
そう思いながら歩いていると廊下の先に見覚えのある黒い影
『龍!』
名前を呼べば彼は明らかに厭そうに顔を顰めた
まあ、そうだよね.....
私は龍に嫌われてるんだから
「...」
一応無表情に見えるけど伊達に幼馴染みな訳じゃない。龍が何を考えているかなんてすぐ分かる
『今日、終わり?』
出来るだけの笑顔で問うと龍は顔を逸らしながら「もか?」と云った
『うん!』
私はポートマフィアの中でもかなり下
龍や銀よりも立場は下だ
だから基本仕事関連では二人に敬語を使ってる
とはいえ、科学班で人を殺すという行為を余りしない私は仕事上で二人と会うということはそんなになかった
『龍?』
「..いや。なんでもない」
龍の目線はいつの間にか私の手の中の球体に向いていた
『これ、実験で持ってきてたんだけど梶井さんが多過ぎるからって一個くれてんだ。......いる?』
「なっ!そんなものっ!」
欲しいんだ.....
『あげるよ』
片手間に林檎を投げると龍はそれを両手で受け取った