第2章 林檎一個分の儚さ(芥川龍之介)
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私には好きな人がいる
幼馴染みの芥川龍之介
彼と妹の銀とは同じ孤児院で育ち、一番仲が良かった
「?」
『あっ。すみません梶井さん!』
どうもボーっとしていたらしく上司の梶井さんが顔を覗き込んでいた
「構わないよ」
クスリと笑いながら云う梶井さんに私は静かに胸を撫で下ろした
「。今日は終わりで良いよ」
梶井さんは肩を竦めた
時計を見やると何時もより少し遅い時間を指していた
今日は終わりか
『じゃあ帰ります』
白衣を脱ぐと私は荷物を手に持って化学室を出ようとした
刹那、
『!』
梶井さんの声が聞こえ、振り返ると共に何かが飛んできて、其を反射的に取った
『これって.....』
其は真っ赤に熟れた林檎だった
と云うのも今回の実験で必要な物だった
「流石に多すぎるからね。良かったらどうぞ」
そう云うと梶井さんはウインクをした
『有難うございます!』
梶井さんに一礼すると今度こそ化学室を出た